紹介するプラスチック製装具は、シューホーンブレース(Shoe Hone Brace)と呼ばれるプラスチック製短下肢装具 (Ankle Foot Orthosis)で、義肢装具士の学校でも最初に習う装具です。ここでは次の段階に分けて製作工程について説明いたします。
1.採型
2.陽性モデルの修正
3.プラスチックの成型
4.プラスチックのトリミング
5.装具の仮合わせと修正
6.ストラップの製作と取り付け
7.完成
1.採型
①患部にラップを巻いて離型しやすいように準備します。
30年くらい前まではプラスチックラップが義肢装具業界ではあまり普及していませんでした。患部に直にギプス包帯を巻いて採形していたので、体毛を巻きこんでしまい、患部から抜き取る際に大変痛い思いをさせていました。
②採型したギプス包帯を切り開く為、装具製作に必要のない部分に紐を配置しておきます。
シューホーンブレースは脚部の後方―ふくらはぎから足底部―を覆うプラスチック装具なので、前方の形状をきれいにかたどりする必要はありません。
③骨突起部に水性鉛筆でマーキングしていきます。水性鉛筆は水に濡らすと溶ける芯が入った鉛筆で、義肢装具士の方に広く利用されています。マーキングされた箇所はギプス包帯から陽性モデルへと転写されます。
シューホーンブレースの場合、腓骨頭、内果、外果、第一中足骨骨頭、第五中足骨骨頭と骨底、舟状骨へのマーキングが一般的です。
④ギプス包帯を水またはぬるま湯に浸し、患部に巻いてゆきます。
ギプス包帯は水の温度によって硬化速度が変化します。水に浸した後、水分を適度に絞りますが、絞りすぎるとガーゼ生地に塗布されたギプスも流れだしてしまいます。患部に巻く際は段差ができないよう、あまり引張らないで巻いて行くのがコツです。
⑤このような状態になるまで巻いて、硬化を待ちます。
このとき足関節の角度に注意します。
⑥前方を切り開いて、再び閉じて石膏を流し込むので、ズレがないように合い線を描いておきます。
⑦紐を引っ張り、ギプス包帯を浮かせながら、包丁で切り開いてゆきます。
切り開く箇所のギプス包帯が厚いと、紐で浮かせる事もできません。ギプス包帯を巻くときは前方は極力薄く、2層程度にとどめておく事がコツとなります。
⑧ギプス包帯を切り開いたら、脚部を抜き取ります。
関節角度が中間位で固定されていますので、切り開いた前方を大きく広げ、速やかに抜き取ります。
⑨このような状縦のモデルを陰性モデルと呼びます。
脚部を抜き取る際に陰性モデルの形状を崩してしまいますので、合い線を参考に形状を復元しておきます。
陰性モデルの取得ができました。
2.陽性モデルの修正
①陰性モデルに石膏を流し込み、陽性モデルを製作します。陰性モデルの切り開いた部分をシールする為にもギプス包帯で封印します。
②陽性モデルの修正作業を行いやすくする為に、鉄パイプを埋め込みます。
鉄パイプの先端に取り付けた金属支柱は陽性モデルが折れないように補強する為です。
③石膏を流し込みます。
④石膏が硬化したら、陰性モデルを取り除きます。
⑤陰性モデルから取り出した陽性モデルです。表面はギプス包帯の跡や、強く巻いてしまって凹んだりしたところなど、デコボコしています。
この状態から修正を施していきます。
⑥まず、足底がグラグラしていないか、適切な角度で立つことができるか、チェックし、平らになるように削り修正を施します。
ふくらはぎなどデコボコしているところは、サーフォームと呼ばれるヤスリで削り整え、表面が滑らかになるように金網などできれいに磨きます。
⑦各骨突起部に盛修正を行います。つま先部分し1cmほど延長しておきます。
⑧プラスチックの成型
⑨プラスチックのトリミング
⑩装具の仮合わせと修正
⑪ストラップの製作と取り付け
⑫完成